結論
アウロラ テッシーは、ボールペンの常識から外れたデザインと、薄いボディに収められた独特の機構を楽しみたい人におすすめの一本です。見た目だけなら、書きやすさより造形を優先したペンに見えます。しかし実際に使ってみると、想像以上に書き心地がいい。ペン先がぶれず、握ったときのフィット感もよく、この形でここまで書けることに驚きました。
今回購入したのは、ブラックのボディにゴールドカラーのパーツを組み合わせたビンテージモデルです。全長137mm、重量16.2g、厚み5.5mm。一般的な円筒形とはまったく違う、細くて平らな姿が特徴です。ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されているデザインを、自分の手で動かし、実際に書いて確かめられる。文房具好きにはたまらない魅力があります。
ペン先の視界やペンホルダーへの収納には弱点があります。それでも、このデザインと機構にはマニア心を刺激されます。万人向けではありませんが、見ているだけでもワクワクする。長年欲しかった一本を手にして、本当に買ってよかったと思いました。
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アウロラ テッシーの基本情報


アウロラは、1919年にイタリア北部のトリノで創業した高級筆記具メーカーです。イタリア初の万年筆メーカーとして知られ、建築家や工業デザイナーと協業しながら、筆記具のデザインに挑戦してきました。美しい外観だけでなく、自社でペン先を製造する技術を持つメーカーでもあります。アウロラ公式のブランド紹介でも、そのものづくりとデザイナーとの関わりが紹介されています。
テッシーを手掛けたのは、イタリアの建築家・工業デザイナーのマルコ・ザヌーゾ。『ザ・ペンシル・パーフェクト』で年代を確認したところ、テッシーは1970年に登場し、1975年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久保存コレクションに収蔵されています。50年以上を経ても古さを感じさせない、異彩を放つデザインです。単なる珍しい筆記具ではなく、工業デザインの歴史の中に位置づけられる一本です。MoMAの資料にも、ザヌーゾによるテッシーがコレクションの一つとして登場します。
文房具好きなら、ラミーのダイアログ1を思い浮かべる方もいると思います。通常の丸いボールペンから離れた幾何学的な造形と、斜めに切り落としたような先端には、通じる面白さがあります。ダイアログ1の発売は、テッシーから約33年後の2003年です。実はマルコ・ザヌーゾ氏とダイアログをデザインしたリチャード・サッパー氏は、長年一緒に仕事をしていたデザイナーなんです。更にこちらのテッシーと一緒にニューヨーク近代美術館に収蔵されているアスティルという万年筆は、その二人が共同でデザインしたモデルなんです。
テッシーを手にすると、書く道具の形はもっと自由でいいのだと、改めて実感します。

今回の一本は、東京へ行った際に新宿のキングダムノートで購入しました。購入価格は税込18,800円です。純正の箱はありませんでしたが、ペン自体の状態がよく、お店の箱に入れていただきました。以前からいつか手にしたいと思っていたものの、実物を触って購入できる機会がなかったので、見つけたときはとてもうれしかったです。店頭で試し書きまでできたことも、購入の決め手になりました。
よく見かけるのはシルバーカラーですが、今回選んだブラック×ゴールドは、シルバーとはかなり印象が違います。ブラックの平たい面に、先端、クリップ、軸上部のゴールドが映える仕様です。テッシーにはスターリングシルバー仕様などもあり、仕様ごとに価格帯が異なります。今回調べた定価は27,500~52,800円でしたが、今回の18,800円はあくまで購入した中古個体の価格です。
すでに廃番となっており、入手先は中古品やデッドストックが中心です。欲しいと思ったときに、好きな仕様を新品で選べるペンではありません。だからこそ、外観だけでなく、操作方法やリフィル交換の仕組みまで記録しておきたい一本です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | AURORA THESI(アウロラ テッシー) |
| メーカー | アウロラ/イタリア |
| デザイナー | マルコ・ザヌーゾ |
| 発売年 | 1970年 |
| 今回の仕様 | ブラック×ゴールド |
| 購入価格 | 18,800円(税込・中古) |
| 全長 | 137mm(実測) |
| 重量 | 16.2g(実測) |
| 厚み | 5.5mm(実測) |
| ボディ | 薄型・平型の金属製 |
| 繰り出し方式 | サイドスライド式 |
| リフィル規格 | A2規格 |
| 今回使用したリフィル | シュミット製・A2規格の油性リフィル |
| 重心 | 中央付近 |
| クリップ | 上部を押すと開く可動式 |
| 流通 | 中古品・デッドストック中心 |
薄い金属ボディと口金を持たない先端

一番の特徴は、とにかく薄く平らなボディです。厚みは実測5.5mm。一般的なボールペンのように、丸い軸の先へ口金を取り付けた形ではありません。ボディの先端そのものが斜めにカットされ、その断面からペン先が出てきます。テッシーには、外観上独立した口金という概念がありません。この潔さがいいんですよ。
軸にあるのはメーカー名の印刷だけで、余計な表記はありません。ブラックの表面は少しザラッとしていて、指にわずかに引っ掛かります。強く食いつくグリップではありませんが、完全にツルツルというわけでもない。この控えめな表面の感触と、平たい形状の組み合わせが特徴です。
先端の断面はゴールドで彩られており、薄い黒い板のようなボディに、明確なアクセントを与えています。軸上部もゴールド。装飾を増やすのではなく、必要な場所に色を置くことで、全体をすっきりまとめています。
サイドスライド式の繰り出し機構


ペン先は、側面のスライダーを先端へ向かって滑らせると出てきます。収納するときは、小さな解除ボタンを押します。後端を押す一般的なノック式や、軸を回すツイスト式とは異なり、平たいボディの側面で操作を完結させる仕組みです。


面白いのは、この解除ボタンの動きです。ペン先を収納している間は、ボタンが出ていません。ペン先を繰り出すと、初めて小さなボタンが現れます。必要なときだけ操作部分が姿を見せる。この動きまで含めて、とてもおしゃれです。
薄いボディに大きなノックボタンを付けるのではなく、スライダーと解除ボタンを側面に収めているから、外観のまとまりを崩しません。見た目のために機構を隠すだけでなく、ペン先の状態とボタンの状態が連動しているところに、このペンならではの面白さがあります。
ペン先ユニットの分解とA2規格リフィル

リフィル交換も独特です。まずペン先を出した状態にして、先端の斜めになった断面部分を押し込みます。その状態で下側の解除部分をスライドさせながら押すと、ペン先ユニットが飛び出してきます。軸を真ん中でねじって開くような交換方法ではありません。
ここは少しコツが必要でした。両手で先端と解除部分を別々に押しても、なかなか外れません。片手で操作した方が解除しやすいという話の通り、最初は動かし方に苦労しました。普段触っているボールペンとは、分解時の手の使い方まで違います。


中に入るのはA2規格のリフィルです。あまり聞き慣れない方もいると思いますが、全体が長く、先端部分も長いのが特徴です。今回の個体にもともと入っていた初期リフィルは入手できなかったため、同じA2規格のシュミット製油性リフィルへ交換しました。このリフィルで実際に筆記できています。
廃番の本体でも、交換できるリフィルがあるのはうれしいところです。シュミットの公式リフィル一覧にも、A2規格のS 700が掲載されています。今回の検証でも、独特な本体を飾るだけで終わらせず、書く道具として使い続けられることが確認できました。
薄さに合わせた可動式クリップ


クリップも非常に薄く、ゴールドの面がブラックで縁取られています。最初は、この薄さでしっかり挟めるのかと思いましたが、上部を押すと開く可動式になっていました。隙間へ無理に差し込むのではなく、クリップを開いて挟む構造です。
クリップだけが厚く飛び出すこともなく、平たいボディの雰囲気にきちんと合っています。先端の処理、側面の操作部、クリップまで見ていくと、単に薄くしただけではなく、その薄さを成立させるために各部分を作り込んでいることが分かります。
使用した感想
書き心地

実際に書いてみると、すごく不思議な感覚です。このデザインなら、普通のボールペンのような書きやすさは期待できないと思っていました。しかし、想像以上に書きやすい。店頭でも試し書きしていましたが、改めて使っても、書き心地は結構いいです。
最初の印象が強烈なだけに、予想以上に書けると、そこに感動して評価が上がりやすくなります。その驚きだけで判断しないように見ても、ペン先は安定していますし、握ったときのフィット感もいい。一般的なボールペンの書き心地を上回るという話ではありませんが、これだけ独特な形で、きちんと筆記が成立しています。
今回入れたシュミット製リフィルのインクは、サラサラ、ヌルヌルという方向ではなく、硬めです。私はこうした硬めのインクも好きなので、書いていて楽しいです。軽い力で滑り続けることより、紙へ線を置く感触を楽しみたい人には、この組み合わせが面白いと思います。
リフィルの先端が長く出るため、ボディに隠れがちなペン先まわりの視界も、ある程度確保されています。細長いリフィルは薄い軸に収まるだけでなく、書くときの見え方にも関わっています。外観だけでは分からない、使って初めて気づくポイントです。
重心バランス
重心は中央付近です。重量は16.2gで、金属製の高級ボールペンとして、ずっしり重さを押し出すタイプではありません。厚み5.5mmの薄いボディを持ったときの感覚と、中央にある重心が組み合わさり、意外なほどバランスよく筆記できます。
丸い軸のように指の中で自由に転がして持つ感覚とは異なりますが、平たい形に指を合わせたときのフィット感は流石です。見た目の奇抜さから想像する扱いにくさが、そのまま筆記中の負担にはなっていません。
剛性感

ペン先はぶれず、安定しています。テッシーの書き心地を支えているのは、この点です。薄い軸と長く出たペン先を見ると頼りなく見えますが、実際に書いたときに、そこが不安定さとして出てきません。
外観に独立した口金がなくても、筆記時のペン先はきちんと支えられています。細さや薄さと、書いたときの剛性感は別の話です。形を見ただけで判断していたら、この安定性は分からなかったと思います。
良かった点
一番気に入ったのは、やはりデザインです。ボールペンらしからぬ平たい形、不要なものをそぎ落としたシンプルな外観、ブラックに映えるゴールド。どこを見ても独特で、ずっと触ってみたかった気持ちに応えてくれました。
さらに、その見た目から想像する以上に書き心地がいい。握ったときのフィット感、ペン先の安定性、中央重心のバランスが揃っています。デザインを見る楽しみと、実際に動かして書く楽しみを両方味わえるのが魅力です。
- 50年以上前のデザインとは思えない、薄く平らな金属ボディ
- スライダーと小さな解除ボタンによる独特の操作感
- 想像以上に書きやすく、ペン先のブレもない
- A2規格のシュミット製リフィルで使い続けられる
- 薄さを崩さず、きちんと開いて挟める可動式クリップ
気になる点

まず、ペンホルダーへの収納です。高級ボールペンですし、機構も複雑なので、持ち運ぶときは大切に収納したいところです。しかし、この薄さと細さによって、ペンホルダーに入れても抜け落ちてしまいます。通常の丸い軸が収まるホルダーを、そのまま使えるとは考えない方がいいです。
次に、ペン先の視界です。リフィルが長く出るので最低限の視界はありますが、それでも平たいボディに隠れて、見える範囲は狭いです。ペン先まわりの見やすさを重視する人には、はっきり気になる部分になります。
ただ、そもそも実用性だけを追い求めて作られた一本ではありません。このデザインのまま、ここまで使えることに価値があります。私が実際に使って気になったのは、主にこの収納と視界の2点です。
他モデルとの比較
ここでは、独自の形状を持つBLACKWING Rollerball penと、工業的な造形が印象的なS.T.デュポン デフィを比較します。どれもデザインに個性がありますが、その個性を筆記具としてどうまとめているかは大きく違います。
BLACKWING Rollerball pen
BLACKWING Rollerball penは、アルミ削り出しのハーフムーン形状と、ノック式の操作を組み合わせた一本です。メーカー公式でも、平たい面を持つ形状、デュアルスプリング機構、Schmidt P8127の採用を紹介しています。テッシーが薄さそのものを追求した造形なら、BLACKWINGは太さと重さを残しながら、握りやすさと転がりにくさを持たせた形です。
| 比較項目 | アウロラ テッシー | BLACKWING Rollerball pen |
|---|---|---|
| 価格 | 購入18,800円(税込・中古) | 14,850円(税込・既存レビュー時) |
| 重量 | 16.2g | 約31g |
| 重心 | 中央付近 | 低重心 |
| 形状 | 厚み5.5mmの薄型・平型 | 約13mmのハーフムーン形状 |
| 機構 | サイドスライド式 | ノック式 |
| リフィル | A2規格・油性 | 初期芯はSchmidt P8127・ローラーボール |
| 筆記時の剛性感 | ペン先がぶれず安定 | 既存レビューでは音と振動が気になる |
BLACKWINGの既存レビューでは、初期リフィルのインクが乾いていたため、G2規格のジェットストリームへ交換して検証しました。交換後も筆記中の音と振動が気になりましたが、G2規格を使って好みの書き心地にできる点は魅力です。テッシーは硬めの油性インクと安定したペン先、BLACKWINGはブランドの世界観とリフィルを交換する楽しさ。薄型デザインを手元で味わいたいならテッシー、太い軸と低重心、ノック操作が好みならBLACKWINGという選び方になります。形状と機構の公式情報はBlackwing公式製品ページでも確認できます。

S.T.デュポン デフィ
比較するデフィは、以前レビューした全長139mm・重量40gの旧デザインです。金属フレームとボディの立体的な組み合わせ、長い口金、滑らかなツイスト機構が特徴です。メーカーもデフィのデザインを戦闘機の胴体に着想したものとして紹介しており、薄い面で魅せるテッシーに対して、デフィは立体感と重厚感で存在感を出しています。
| 比較項目 | アウロラ テッシー | S.T.デュポン デフィ(既存レビューの旧モデル) |
|---|---|---|
| 価格 | 購入18,800円(税込・中古) | 45,100円(税込・既存レビュー時) |
| 全長 | 137mm | 139mm |
| 重量 | 16.2g | 40g |
| 重心 | 中央付近 | 高重心 |
| 機構 | サイドスライド式 | ツイスト式 |
| リフィル | A2規格・シュミット製油性 | G2規格・イージーフロー |
| 書き心地 | 硬めのインクと安定したペン先 | 低粘度油性の滑らかさと重さを活かす |
| 造形 | 薄く平らな金属ボディ | 金属フレームを使った立体的なボディ |
長さは近くても、重量差は23.8gあります。デフィは高い剛性感と滑らかなインクを、40gの重さで支えるタイプ。短時間のメモやサイン、ビジネスの場で重厚な筆記感を楽しみたい人に向いています。テッシーは、軽さと薄さの中に成立している安定性が面白い一本です。価格と重さだけで上下を付けるより、デフィの塊感が好きか、テッシーのそぎ落とした造形が好きかで選ぶ方が、この2本の魅力をつかめます。デザインの背景はS.T.デュポン公式のデフィ紹介も参考になります。

こんな人におすすめ
✅ 向いている人
- 一般的な丸いボールペンとは違う、独創的なデザインが好きな人
- マルコ・ザヌーゾの工業デザインを、実際に書いて楽しみたい人
- スライド機構や独特なリフィル交換など、構造に興味がある人
- 硬めの油性インクと、安定したペン先の書き心地が好きな人
- 中古品やビンテージの中から、気に入る一本を探すことを楽しめる人
❌ 向いていない人
- 書き心地と実用性だけを最優先して選びたい人
- ペン先まわりの広い視界を求める人
- 手持ちのペンホルダーにそのまま収納したい人
- 太い円筒形のグリップや、強い滑り止めが必要な人
- 現行品を新品で気軽に購入したい人
総合評価
| 評価項目 | 評価(各10点満点) |
|---|---|
| 書き心地 | 9.5 / 10 |
| 重心バランス | 8 / 10 |
| 剛性感 | 8.5 / 10 |
| デザイン | 10 / 10 |
| コスパ | 7 / 10 |
総合評価: 8.6/ 10
テッシーは、数字や機能の多さだけで魅力を測るペンではありません。最大の価値は、この造形と機構を実際に手で確かめられることです。それでいて、書いてみるとペン先が安定し、フィット感もよく、想像以上に使える。この意外性まで含めて、非常に魅力的な一本でした。
視界と収納には弱点がありますが、そのためにデザインの魅力が薄れることはありません。状態のよい個体を自分の手で確認して購入できたことも含めて、今回の満足感は大きいです。
まとめ
アウロラ テッシーは、薄く平らな金属ボディに、サイドスライド式の機構、姿を現す解除ボタン、独特なペン先ユニット、可動式クリップを収めたボールペンです。どの部分も一般的なペンと違い、見た目だけでなく、触って動かすところまで楽しませてくれます。
A2規格のシュミット製リフィルに交換して筆記でき、ペン先のブレもありません。奇抜なデザインなのに、思っていた以上に書きやすい。このギャップも、長年手にしたいと思っていた気持ちに応えてくれました。
廃番なので入手には出会いが必要ですが、気になる方には、ぜひ実物に触れてほしいです。万人受けする一本ではありません。それでも、このデザイン、この機構に惹かれる人なら、見ているだけでもワクワクできると思います。私にとっては、久しぶりにそんな気持ちになれた、本当に買ってよかった一本でした。
YouTube動画
実際の薄さ、サイドスライド式の操作、ペン先ユニットの取り外し方、筆記時の様子は、YouTube動画でも紹介しています。文章だけでは伝わりにくいテッシーの独特な動きを、ぜひあわせてご覧ください。

